年齢とともに物忘れが多くなると、認知症への不安が頭をもたげてきます。
しかし最新の研究で、運動によって脳を活性化し、認知機能を向上させられることがわかってきました。
脳の活性化でポイントとなるのは、「海馬」と「前頭前野」です。海馬は、記憶や学習機能をつかさどります。
前頭前野は、注意や判断といった実行機能をつかさどります
例えば横断歩道を歩行中に、過って車が突っ込んできた場合、瞬時に危険を察知して逃げる、といった行動は、前頭前野の働きです。
これらの機能は、加齢とともに衰え、例えば海馬では、何もしなければ年間1~2%の割合で体積が縮小するといわれています
しかし近年、海馬の神経の「可塑性(かそせい)」に研究者の注目が集まっています。
海馬には、情報を伝達する神経が網の目のように張り巡らされていますが、情報が速く伝達するように網目が組み変わることがわかったのです。
また、海馬の「歯状回(しじょうかい)」という部分の神経細胞も注目されています。
基本的に、神経細胞は傷ついたり死んだりして減るばかりですが、歯状回の神経細胞は新たに生まれる(新生)のです。
海馬の可塑性や神経細胞の新生により、年をとっても記憶力や判断力を改善することは可能です。
ただ、運動と聞いた瞬間、「嫌だ」と拒否反応を示す人や、病気があって難しい人もいるでしょう。しかし朗報があります
ヨガや太極拳などの「軽い運動」、脈拍でいえば1分間に90~100回レベルの運動でも、海馬は十分活性化するのではないかという研究成果が報告されたのです。
私たちの研究室では、最新鋭の測定装置を使い、ネズミと人で脳の活性化する場所を特定しながら、運動実験を行っています
この実験で、ネズミに軽い運動をさせると海馬の体積は増加しました
人の海馬に関しても、現在研究が進んでいます。
一方の前頭前野に関しては、人でも結果が出ています
軽い運動を1日にたった10分間行うだけで、実行機能を担う前頭前野の「背外側部」という部分の血流量が増加し、テストに対する反応が速くなったのです。
さらに実験結果を細かく見ていくなかで、興味深いことがわかりました
若い人が素早く対応するテストに、時間はかかるものの対応できていた高齢者は、若い人が左右の脳の片方だけを使っているところを、両方の脳を使っていました
これは、若いころは片方の脳でやっていたことを、もう片方の脳がバックアップ(支援)にまわり、
両方の脳で対応していたからでした。
こうした脳のバックアップ機能を「認知予備力」といいます
認知予備力によって、高齢になってもテストに対応することができたのです
長く勉強を続けてきた人、読書やレジャー活動、運動を行う習慣がある人は、この能力が高いことがわかってきました
最後に付け加えると、運動をする際、楽しんで行うことが大切です
「医師に言われたから、しかたなくやる」のではなく、自分が楽しめる運動に取り組んでください
ネズミを使った研究でも、ストレスなく運動したほうが、海馬の神経がより増えるという結果が出ています。
少し前までは、脳細胞は大人になってからは1日10万個もの細胞が死んで行って、減るだけだといわれていました。
今では、年を重ねてからも増えているのが一致した見解になっています。
何事も“楽しく”続けることが大切ですね (^^♪
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